妄想夜話 -或いは此れも幸せな日常-

日々の暇に思いついたお話。或いは杉田さんとピンキー達とのあれこれ。
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KISS×KISS

 それは、何て事のないある日の風景。


      ▼


「……はぁ」

 溜め息がこぼれる。
 アイドルになって早数ヶ月が経ち、アイドルとしての生活にも随分と慣れてきた。それでもやよいは、レッスンの合間にこんな風に溜め息を吐いてしまうことがある。
 それは何も、アイドルとしての自分に不安や不満があるわけではなくて。

「どうしたやよい、疲れたか?」

 傍らのプロデューサーが、やよいに優しく話し掛けた。

「ここのところダンスレッスンばかりしているからなぁ。次の新曲はダンス中心の元気な曲だから、どうしてもダンスレッスンばかりになってしまうんだけど、やっぱり大変か?」
「いえ、それは大丈夫なんですけど……」

 ダンスレッスンが嫌いではない。アイドルになって、ステージでみんなに歌を聞いてもらえることは勿論嬉しかったけど、歌って踊れるならもっと楽しいし、嬉しいから。

「でも、ここのところちょっと暑くなってきましたから。私、あんまり体力無いみたいです」

 えへへ、と笑って、やよいは手元のスポーツドリンクに口を付ける。

「……まぁそうだよな。確かに最近は少し暑くなってきたし、喉も渇くもんな。よし、休憩にするか」

 そう言って、プロデューサーは周りを見回した。

「そういえば、亜美と真美はどこに行ったんだ?」
「あ、二人なら、喉が渇いたからジュースを買ってくるって言ってましたよ?」
「いつの間にいなくなったかと思えば……俺の分も頼めば良かったなあ」

 ポケットの中で小銭をちゃりんと鳴らしながら、プロデューサーが呟く。

「あ、それじゃあ、プロデューサーも飲みますか?」

 やよいはスポーツドリンクの残量を確かめるように、ペットボトルを軽く振った。

「まだ結構余ってますし」
「え、いいのか、やよい?」
「もちろんですっ。それじゃあ私、コップ取ってきますね!」

 そう言って立ち上がろうとするやよいを手で制して、

「いや、いいよこのままで」
「…………えっ?」

 呆然とするやよいの目の前で。
 プロデューサーは、ペットボトルに口を付けた。

「ぷは、美味いなこれ。ありがとうやよい、助かったよ」
「……あ、はい……えっと……どういたしまして……」
「? どうしたやよい? 顔が紅いみたいだけど」

 呆然とするやよいに、プロデューサーが訝しげな顔を近づける。
 やよいは真っ赤な顔を誤魔化すように、わたわたと両手を振って、

「え、えええっ!? いえ、なんでもないんですっ。本当にっ!」
「? そうか」

 あっさりと顔を離すプロデューサー。
 それを何故か残念に思いながら、やよいは火照った自分の頬を押さえて、高鳴る胸の鼓動の正体をぼんやりと考えていたのだった。




 そんな様子を盗み見る、二人の視線。

「ねえ今の見た、真美?」
「見た見た、見たよー!」
「兄ちゃんってば、チョードンカンだよねー?」
「だねだね。やよいっちってば、固まっちゃってるよ」

 心底楽しそうに笑う、亜美と真美。

「んっふっふ〜。これって、恋のヨカンってやつかな、真美?」
「きっとそうだよー。ねえ亜美、ここは真美たちが、ヒトハダ脱いであげなきゃだねー?」
「おー! 真美ってば、恋のキューピーみたいだねっ」

 くるくると回りながら。
 亜美と真美は、とっても面白いことを思いついたみたいに、やっぱり楽しそうに笑う。

「んじゃ、作戦立てよっか、真美?」
「うん、立てなきゃ立てなきゃー!」


      ▼


「ということで!」

 プロデューサーが休憩を宣言して、スタジオから出て行ったのを見計らって。
 それからやよいの元へ現れた亜美と真美は、こう宣言したのだった。

「ここは真美たちが、やよいっちに恋のABCってのを教えてあげちゃうよ〜?」
「……えーと」

 困惑するような表情を浮かべて、やよいは亜美と真美を交互に見た。
 いかにも楽しいことを思いついたみたいな表情で、いきなり何を言い出すんだろう、この二人は?

「どういうことなのかな……?」

 恐る恐る聞いてみた。

「だから、やよいっちの恋は、亜美と真美におまかせなんだよー!」
「兄ちゃんを見て頬を染めるやよいっち、それはまさしく恋、ってやつなんだよー!」

 ……聞かなきゃよかったかも。

「違うよー。プロデューサーは、だって私たちのプロデューサーだもん」

 そう言って、やよいは曖昧に笑ってみせる。
 何故かちくりと痛む胸のことは、気にしないようにしながら。

「んんー、これはなかなか重症ですな、亜美くん?」
「そうですね真美せんせー。これは即刻治療が必要ですねー」

 でも、この二人には、やよいの主張は届かないらしかった。やよいは大きく溜め息を吐く。

「……そもそも、ABCってなに、真美?」
「んっふっふ〜。まずは、これを見て!」

 そう言って、真美は小さなホワイトボードを取り出した。

「Aってのは、つまりチューのことなんだよ!」

 赤いマーカーで、大きく『A=チュ→』と書いてみせる真美。

「ちゅ……チュー?」
「そうそう。ほっぺにチューとか、さっきみたいなカンセツチューとか。最初のステップ、つまりABCで言ったらAなんだよー!」
「へぇ〜」

 真面目な顔で、思わず大きく頷くやよい。

「おー、真美っち物知りハカセー!」
「ふふー」

 亜美の賞賛の声に、満足そうに頷いてみせる真美。

「じゃ、じゃあBは? Bって、なに?」

 真剣そのものの顔で、やよいが問う。すると真美は、んっふっふ〜、と怪しく笑って、

「それはもちろん、……ねー、亜美?」
「だねー。それはもちろん、カップルになったらする、えっちなことだよー!」
「えっ……えっ、えっ、えっ、ええ〜っっ!?」

 うろたえるやよいの顔を見て、亜美と真美は心底楽しそうに笑った。
 それから真美は、赤いマーカーを取り出すと、ホワイトボードに大きく文字を書いて、

「つまり、Bはブチューのことなんだよ!」

 『B=ブチュ→』と書き加えたホワイトボードを自慢げに掲げてみせた。

「…………え?」

 やよい、フリーズ。

「……あ、ああーっ! うん、そうだよね! そっか、ブチューかあ……びっくりした」

 ほっと胸をなでおろす。

「ん? どうかしたのやよいっち? 顔が紅いけど?」

 不思議そうに首を傾げる亜美と真美。

「ううん、なんでもないのっ!」

 誤魔化すようにわたわたと手を振りながら、やよいは曖昧に笑ったのだった。


      ▼


「ということで!」

 結論。そう言って、真美が亜美の顔を見た。亜美が応えるように大きく頷く。

「やよいっちは、兄ちゃんにブチューってしてもらえばいいんだよ!」
「な―――」

 思わず絶句するやよい。
 一体何を言い出すんだろう。亜美と真美は。

「だってやよいっち、さっきの態度は明らかに恋だったよ?」
「さっきのって……?」
「ほら、兄ちゃんがやよいっちのペットボトルに口を付けたときだよ。やよいっちってば、真っ赤だったもん。ねー、真美?」
「うんうん。やよいっち、ゼッタイに意識してた!」
「だよねー、あれはもう、兄ちゃんにブチューってしてほしいって顔だったよね!」
「そ、そそ、そんなこと……」

 ない、と言おうとして。
 やよいはどうしても、胸がちくんと痛むのを自覚してしまって、やっぱり紅くなってしまう。

「兄ちゃん、頼めばきっとしてくれるよ?」

 無邪気に言う亜美。

「だね。兄ちゃん、いつもやよいっちに優しいもんね」

 ちょっと寂しげに笑う、真美。


 そして、


「お、亜美と真美も帰ってきたか」

 タイミングよくレッスンスタジオに戻ってくるプロデューサー。

「兄ちゃん、おかえりー!」
「待ってたんだよ、兄ちゃん!」

 亜美と真美が、プロデューサーにぎゅっと抱きついた。

「ただいま、亜美、真美。やよい、休めたか?」
「ええっ!? は、はは、はいっ、それはもうっ!」
「?」

 どもるやよいを不思議そうに見るプロデューサー。

「兄ちゃん、やよいっちはね、兄ちゃんにお願いがあるんだって!」

 悪戯っぽく笑いながら、亜美。

「そうだよ! 兄ちゃん、やよいっちのお願い聞いてあげてー!」

 同じく、真美。

「ちょ、ちょっと待ってよ二人ともっ。私、まだ心の準備が……」

 困ったように口ごもるやよい。
 そんな三人の様子に首を傾げながら、プロデューサーはやよいの顔を見て、

「どうしたんだやよい? 何かあるんだったらぜひ言ってみてくれ」

 そう言って、優しく微笑んだ。

 両手をもじもじと動かしながら、顔を真っ赤にして俯くやよい。それを見て、後ろの方でヒューヒューとはやし立てる亜美と真美。

 やがてやよいは、意を決したように顔を上げて、

「ぷ、プロデューサーっっ!」
「ん?」
「あの、そのっ。わ、私に、キ、キ、キ……」
「き?」

 続きを促すプロデューサー。
 もう限界、恥ずかしくて顔から火が出そう―――!


 そして、


「き、今日もレッスンよろしくお願いしますっっ!!」



 亜美と真美が派手にコケた。



「? 今日はもうダンスレッスンをしてるじゃないか」

 そう言って笑うプロデューサー。

「い、いえ、あのその、私、今日はやっぱり、これから歌のほうもレッスンしたいなーって思ったんですっ! ほ、ほら、折角の新曲ですからっ!」
「そうか? まぁやよいがそう言うなら、それでもいいか。亜美、真美、二人はどうだ?」

 プロデューサーが亜美と真美に視線を向けると、二人とも脱力したような微妙な顔をしてみせながら、はーい、と答えてみせる。

「……? どうしたんだ二人とも?」
「べつになんでもないよ……」
「そうか。それじゃ、これからボイスレッスンにしよう。レッスン場が開いてるか確認してくるから、三人はもう少し待っててくれ」

 そう言って、スタジオから再び出て行くプロデューサー。その後ろ姿を見ながら、やよいは安堵の溜め息を吐いた。
 それから、

「ごめんね二人とも。がっかりさせちゃって」

 ぺこり、と頭を下げるやよい。亜美と真美は、思わず顔を見合わせる。

「……んー、でもやよいっちはがんばったよ!」

 ぽん、とやよいの肩を叩く真美。

「そうだよ、やよいっちは勇気出したよ! ちょっと空振っちゃったケド」

 あはは、と笑う亜美。

「ま、今回はまだジキショーソーってカンジなのかな、亜美?」
「仕方ないよね、真美?」

 そう言って、二人はやよいの顔を見た。

 そして、





 ちゅ。





 ―――それは亜美と真美からの、ご褒美のキス。

「……え?」

 戸惑ったように、声を上げるやよい。
 恥ずかしそうに笑う、亜美と真美。


「「次は兄ちゃんから、こんな風にしてもらえるといいね、やよいっち!」」

 ちょっぴり照れた風に、でも楽しそうに、二人は声を合わせて。
 そんな亜美と真美を見て、やよいは今日初めて、心の底から笑ったのだった。


(おしまい)



アイドルマスター やよい&亜美真美SS

 (感想お待ちしております。)
| SS(二次創作) | 22:59 | comments(0) | trackbacks(0) | ↑PAGE TOP
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