妄想夜話 -或いは此れも幸せな日常-

日々の暇に思いついたお話。或いは杉田さんとピンキー達とのあれこれ。
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風邪をひいたら(5) <Kanon・風邪ひきショートSS 佐祐理編>

 夢。祐一は、夢を見ていた。
 風邪でダウンしている祐一を見舞いに、舞が祐一の部屋を訪れる夢。

「うぅ……。舞、頼むから、頼むからそのジャムだけはぁ〜」

 何やらうなされていた。

「ああっ、何でそんなもの振り回すんだ……? うわっ、やめろ、やめてくれぇ〜……」

 本気でうなされていた。

 そんな祐一の様子を傍らで見守っている少女がいた。
 少女―――佐祐理は、しばらく心配そうな顔をしていたが、やがてそっと祐一の手を取ると、満足そうににっこりと微笑んだ。タオルを片手に祐一の汗を軽く拭って、そのまま、祐一の額を軽く撫でる。

「大丈夫ですよ、祐一さん。佐祐理がついていますからね」

 祐一の左手をきゅっと握って、微笑みを絶やすことなく―――。


     ◇       ◇       ◇


 目覚めに際して、祐一が最初に感じたもの。それは、温もりだった。暖かさを伴って確かに感じるもの。それは紛れもなく、自分の手を握る誰かの手の温もり。
 ほっとするような心地良さとともに、祐一はゆっくりと瞼を開いた。

「あ、祐一さん。おはようございますー」

 にこやかに挨拶されて、祐一は一瞬言葉を失った。だが、すぐに気を取り直すと、

「……おはよう、佐祐理さん」

 まだ朦朧とする意識を必死で励ましながら、挨拶を返す。
 そんな祐一の様子を見て、佐祐理は表情を綻ばせた。

「あははーっ。その様子だと、お加減は随分良くなったみたいですね」
「ああ、結構良くなった気がするよ。それより佐祐理さん、いつからここに?」
「えっと……」

 肩から零れ落ちたロングヘアを右手で弄びながら、佐祐理は少しだけ考え込む。

「夕方の4時ごろにたまたま秋子さんとお会いして、その時に祐一さんが風邪で寝込んでいるって教えて頂いたんですよ。それからすぐに来ましたから……そうですね、1時間くらい前から、でしょうか」
「1時間も? ここで、俺のこと看ててくれたの?」

 少し照れた風に顔を赤らめて、祐一が訊き返した。

「そうですよ。祐一さん、うなされてたみたいでしたから、佐祐理がついていてあげようかなって思ったんです」
「佐祐理さん……」

 正直、それはかなり恥ずかしかった。同時に、とても嬉しかったけれども。

「ありがとう、佐祐理さん」
「いえいえー。佐祐理も、祐一さんのお顔をじっくりと見られて嬉しかったですし」
「……え?」

 聞き咎めて、祐一は思わず訊き返した。すると佐祐理は、少しだけ頬を染めて、笑った。

「あははーっ。何でもないですよ、祐一さん」

 祐一は頭の上に疑問符を浮かべたが、取り敢えず訊かないことにした。
 代わりに、もう1つだけ気になっていたことを、佐祐理に尋ねる。

「そう言えば、今日は舞は? 一緒じゃないの?」
「舞は……」

 そこで、初めて佐祐理の表情が曇った。祐一が思わず身を乗り出す。

「舞がどうかしたのか?」
「いえ……実は……」

 困ったような苦笑を浮かべて、佐祐理は言葉を紡ぎ出した。

「……実は、舞も風邪をひいちゃってるんです」
「えっ、舞も?」
「はい……」

 溜め息を吐く佐祐理。それを見た祐一が、はは、と苦笑した。

「……ま、最近風邪が流行ってるしなぁ」
「そうですね。実は、佐祐理もちょっと風邪っぽいんですよ」

 そう言って、佐祐理は困ったように微笑んだ。それを聞いて、祐一の表情が変わる。

「えっ? それじゃ、佐祐理さんも俺の見舞いに来てる場合じゃないだろ!?」
「あははーっ。気にしないで下さい、祐一さん。この通り、佐祐理は元気一杯ですから」
「でも、それじゃあ佐祐理さんが……」

 抗弁しようと、ベッドから起き上がろうとする祐一。それを遮って、佐祐理はベッドに祐一を押しとどめた。

「佐祐理なら大丈夫ですから。今は、祐一さんが、ちゃんと寝ていて下さいね」

 柔らかく、笑う。

「佐祐理の方がお姉さんなんですからね。お姉さんの言うことは、ちゃんと聞かないとだめなんですよ、祐一さん」
「……分かったよ、佐祐理さん」

 観念したように祐一は肯いて、布団に潜り込んだ。
 佐祐理は微笑みを浮かべたまま、祐一の手を握り直す。

「……不思議だな」

 目を閉じて、祐一がぽつりと呟いた。

「ふぇ?」
「佐祐理さんに手を握っていてもらえると、何だか落ち着く」

 ベッドサイドに座る佐祐理を、祐一が見つめる。どきりと、佐祐理の心臓が跳ねた。

「……祐一さんったら、お上手ですね」

 辛うじて佐祐理がそれだけを答えると、祐一はいたずらっぽく笑った。

「やっぱり、佐祐理さんだからかな?」
「そんな……。佐祐理なんか、普通の子よりちょっと頭の悪い、ただの女の子ですよ?」
「……でも、俺にとっては、佐祐理さんは“特別”だから」

 それだけを言うと、祐一は、静かに眠りに就いた。

 祐一が眠ってしまったことを確認すると、佐祐理は優しげな瞳で、祐一を見つめる。

「佐祐理にとっても……“特別”なんですよ、祐一さんは」

 そう呟くと、佐祐理はベッドに手をついて、祐一の顔に自分の顔を近づけた。そして、




 ―――ちゅ。




「……佐祐理は、いつまでも祐一さんの側にいますからね」

 祐一の顔を幸せそうに見つめながら。
 佐祐理は祐一の手を、いつまでも握り続けていた。その温もりを離さないように、ずっと。



Kanon 倉田佐祐理SS
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