妄想夜話 -或いは此れも幸せな日常-

日々の暇に思いついたお話。或いは杉田さんとピンキー達とのあれこれ。
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風邪をひいたら(4) <Kanon・風邪ひきショートSS 名雪&秋子編>

『古今東西、制服は殿方の浪漫なんですよ。』

 かつて誰かが言ったことば。
 それは確かに正解のような、でもある意味間違いのような。


 けれども1つだけ、確かに言えることがある。
 それは、男だったら誰もが一度は憧れる、ということだ。


     ◇       ◇       ◇


 夏も終わりに近付いた、9月のとある晴れた日の午後。
 相沢祐一は、かつてない状況に遭遇していた。

 目の前にいるのは、近所でも有名な、水瀬家の美人母子。
 いつもと変わりない、いや、むしろいつも以上の微笑みを浮かべて、風邪で寝込んでいた祐一のベッドの側に、2人揃って立っている。
 そこまでは何ら問題はなかった―――のだけれども。

(……まいったな、これは)

 口には出さずに、祐一は心の中でそう呟く。

「祐一さんは、こういう格好はお気に召しませんか?」
「そうなの? 祐一なら絶対に喜ぶと思ったのに……」

 微かに表情を曇らせながら、名雪と秋子が、着ている服を軽くつまんで見せる。
 2人が着ていた服。それは、看護婦の着るような、いわゆるナース服だった。

「いや、その、嬉しいとか嬉しくないとかじゃなくて……」

 むしろ嬉しかった。軽く悦んだりもした。でも、そういう問題ではない。

「さすがにこの状況はちょっとまずいんじゃ……いろいろと……いいんですか?」
「了承」

 1秒だった。

「気にしなくてもいいですよ。風邪で苦しんでいる祐一さんのためなんですから」

 柔らかく微笑みながら、秋子。

「そうだよ。わたしたちは、祐一のために、看病してあげたかったんだよ」

 とても楽しそうに、名雪。

 祐一は2人を交互に見た。やたらと張り切っているし、とても断れるような状況ではない。
 祐一は軽く嘆息すると、観念したように、

「それじゃあ、お願いします」



 ―――それが、始まり。


     ▼


「それじゃあ、熱を測りますね」

 秋子は祐一のベッドに身体を乗せると、祐一の額に自分の額をこつんと当てた。必要以上に密着してくる秋子の身体。恥ずかしくなった祐一は、視線を下に向けたが、

(うわぁっ!)

 秋子の豊満な胸が視界に入って、思わず声にならない叫びを上げる。

「……だいぶ熱があるみたいですね」

 知ってか知らずか、秋子がさらに身体を密着させてくる。
 祐一は、自分の体温がどんどん上昇してくるのを感じていた。

「暖かくして、水分をたくさん取った方がいいですね。名雪、祐一さんに飲み物を」
「はーい。それじゃあ祐一、わたしが飲ませてあげるね♪」

 言って、名雪はスポーツドリンクの入った容器にストローを差した。

「はい、祐一。お口を開けてね」

 あーん、なんて言いながら、名雪は祐一の口元にストローを運んだ。言われるがままに、祐一は名雪が差し出してきたストローを咥える。

(―――!!?)

 その目の前、すぐ側に、名雪の笑顔。

「……ん? どうしたの、祐一?」

 思わず視線を逸らした祐一に、名雪が不思議そうに訊く。

「照れているのよ」

 ベッドから降りて、冷たい水でタオルを絞りながら、秋子が微笑む。

「そうなの?」

 訊きながら、名雪は祐一の顔に自分の顔を近づけた。
 ますます赤くなる祐一の顔を見て、嬉しそうに。

「ふふっ。祐一、照れてるんだ」
「うるせぇ」

 呻くように、祐一はそれだけを呟いた。視線は名雪の顔から逸らしたままで。それを見ていた秋子が、くすっと、笑みを零す。

「それじゃあ、あとは栄養を摂って、ぐっすりと寝れば大丈夫ね」
「そうだね。祐一、ご飯はおかゆでいいかな?」

 言いながら、名雪が祐一の方を見た。
 祐一は、ぐったりとした表情で、ぽつりと。

「……任せた」
「うん! 任されたよ!」

 相変わらず嬉しそうな表情は崩さずに、名雪が大きく肯く。

「それじゃお母さん、わたし、作ってくるね」
「はい、いってらっしゃい」

 ぱたぱたと、部屋を出て行く名雪。そんな名雪の様子を見送りながら、部屋に残った秋子に、祐一は尋ねた。

「……その制服、一体どうしたんですか?」
「仕事先から持ってきたんですよ」

 にこやかに、秋子が答える。

「秋子さんって、看護婦だったんですか?」
「それは、企業秘密です」
「はぁ」

 頭の上に疑問符を浮かべる祐一。それを見て、秋子は悪戯っぽく微笑んだ。

「あ、―――ところで、祐一さん」

 ふと。
 急に真剣な顔つきになって、秋子が口を開いた。祐一が、思わず息を呑む。

「……何ですか、秋子さん?」

 祐一がそう尋ねると、秋子は真剣な面持ちのまま頬に右手を添えて、しばらく何かを考えるかのように沈黙した。祐一の表情に緊張が走る。
 そして。



「私と名雪、どちらに食べさせてもらいたいですか?」


     ▼


「はい祐一、あーん☆」
「次は私ですね。祐一さん、あーんして下さい♪」

 何故かナース姿で、甲斐甲斐しく世話をしてくれる、秋子と名雪。結局どういう結論に至ったのか、2人で一口ずつ交互に、祐一へとおかゆを食べさせている。

 祐一は、そんな2人から視線を逸らせると、こっそりと溜め息を吐いた。

(―――これって、天国なのか、それとも地獄なのか……)



 他の男が聞いたら怒り狂いそうなことを考えながら。
 祐一はもう一度、今度は大きく嘆息したのだった。




Kanon 水瀬名雪&水瀬秋子SS
| SS(二次創作) | 00:31 | comments(0) | trackbacks(0) | ↑PAGE TOP
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